監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
交通事故の被害者を救済する制度として自動車損害賠償責任保険(以下では「自賠責」といいます。)という制度があります。自賠責には、支払いの限度額や、慰謝料の基準等が定まっています。ここでは、主に、自賠責の慰謝料についてご説明していきます。
目次
自賠責の限度額120万円とは?
注意!治療費を含んだ金額です
自賠責から支払われる金額には上限があります。例えば、傷害事故の場合、けがの部分については、120万円が上限額です。そのため、仮にけがについて、これ以上の損害が生じている場合であっても、自賠責からは120万円を超える保険金を受けることができません。
この120万円というのは、治療費や通院交通費、休業損害、慰謝料など、けがに関する損害すべてを合計した金額の上限です。したがって、例えば、治療費がかさむと、自賠責から回収できる慰謝料は相対的に減少するということになります。
120万円を超えた場合の対処法
では、120万円を超える損害についてはどうしたらよいのでしょうか。これについて、自賠責から支払われる金額は、あくまで最低限の支払いであり、この金額ですべての賠償がなされているわけではありません。そのため、これを超える損害については、加害者に請求することができます。加害者が任意保険に加入している場合は、そちらに請求できますし、任意保険に加入していない場合、加害者本人に対して、請求することが可能です。
入通院慰謝料を計算する方法
入通院慰謝料=4300円×実入通院日数×2
または
入通院慰謝料=4300円×入通院期間(入通院期間の日数)
のいずれか金額が低い方
7日加算とは?
自賠責の入通院慰謝料は、上記のとおり、実通院日数と通院期間から考えて計算をしていくことになりますが、場合によっては通院期間が7日加算されることがあります。
例えば、診断書の最終治療日に「治癒見込み」、「中止」、「継続」、「転医」との記載がある場合は、通院期間が7日加算されることがあります。
これにより通院期間が7日増えますので、自賠責から取得できる慰謝料額が増える可能性があります。
自賠責における後遺障害慰謝料とは
治療しても症状が残る場合があり、後遺障害が認定されることがあります。先ほど、説明した120万円という上限は、けがの部分ですが、後遺障害が認定された場合は、自賠責から後遺障害部分についての慰謝料を受けることができます。
この慰謝料額は、認められた等級ごとに決められています。例えば、後遺障害14級9号(ムチウチ等で認定される)の場合は、32万円を慰謝料として受け取ることができます。
その他は、以下の表とおりとなっています。
等級 | 自賠責保険基準の慰謝料 |
---|---|
第14級 | 32万円 |
第13級 | 57万円 |
第12級 | 94万円 |
第11級 | 136万円 |
第10級 | 190万円 |
第9級 | 249万円 |
第8級 | 331万円 |
第7級 | 419万円 |
第6級 | 512万円 |
第5級 | 618万円 |
第4級 | 737万円 |
第3級 | 861万円(1005万円) |
第2級 | 998万円(1203万円) |
第1級 | 1150万円(1650万円) |
※()内は介護を要する後遺障害
後遺障害等級認定されるよう弁護士がサポートいたします。
自賠責から後遺障害部分の保険金を受けるためには、後遺障害の認定を受けることが必要となります。後遺障害の認定を受けるためには、後遺障害の認定申請をする必要がありますが、この点についても弁護士がサポートすることができます。
具体的には、後遺障害診断書の作成段階から身体の状況に合わせて必要な記載をお願いしたり、後遺障害認定申請を代理で行うことなどが可能です。
また、後遺障害認定申請の結果、非該当と判断されたり、想定よりも低い等級で認定された場合は、異議申立てをすることも可能です。この異議申し立てについては、一度、想定どおりの結果が認定されていないことから、新たな資料を収集することや異議申立ての審査にあたり意見を付すことが重要といえます。弁護士は、専門家として意見書の作成を行うことも可能です。
このように後遺障害の認定を受けるために、弁護士がサポートいたしますので、お気軽にご相談いただければと思います。
自賠責における死亡慰謝料とは
交通事故の結果、被害者が亡くなった場合、自賠責から死亡に対する慰謝料が支払われます。この場合、亡くなった被害者人の慰謝料と被害者の遺族自身が請求できる慰謝料とがあります。
本人の死亡慰謝料
交通事故により死亡した場合の慰謝料については、亡くなった本人の慰謝料と遺族の慰謝料とがあります。亡くなった本人の慰謝料については、相続人がこの慰謝料を相続して自賠責に請求することができます。
自賠責基準の金額は、亡くなった方の年齢、性別、職業等に関係なく一律に400万円となっています。
遺族に支払われる慰謝料
上記のとおり、遺族には固有で慰謝料請求が認められています。この慰謝料は、亡くなった方の慰謝料とは別に請求できます。 請求できる遺族は、亡くなった被害者の父母、配偶者及び子どもです。なお、被害者の父母については養父母も含み、また、子どもについては養子、認知した子及び胎児も含まれます。
自賠責に請求できる金額は、請求権者が1人の場合には550万円、2人の場合には650万円、3人以上の場合には750万円となっています。3人「以上」ですので、請求権者が4人いても5人いても請求できる金額は750万円となります。
また、亡くなった方に被扶養者がいる場合は、この金額に200万円加算されます。その結果、例えば、亡くなった被害者に、配偶者がおり、この配偶者を扶養していた場合、請求権者が1人で550万円で、これに被扶養者がいることで200万円が加算され、遺族の固有の慰謝料としては750万円の慰謝料を請求できることになります。
死亡事故の場合も、弁護士へご相談ください。
死亡事故の場合、事故に遭われた方が亡くなっているため、まず誰が賠償請求できるのかという点から問題となっていきます。基本的には、被害者の相続人が賠償請求できることから、相続人の調査を行うこととなります。また、相続人でなくても、遺族固有の慰謝料が認められる場合もあるため、この点も考える必要があります。
このように誰が賠償請求できるのかという点に加え、いくらの賠償金額が認められるのかという点も大きな問題となっています。被害者が亡くなっていますので、逸失利益が高額になる傾向にありますが、亡くなった本人の生活費を控除しなければならないなど、死亡事故特有の問題も生じてきます。
被害者の方が亡くなっている場合、そもそも誰が賠償を請求できるのかから始まり、賠償金額も高額で計算が複雑になるなど、死亡事故特有の問題が出てきます。家族が亡くなって辛い状況下において、賠償金額が妥当なのかを判断することは極めて困難でしょう。
弁護士は、専門家として、死亡事故特有の問題についても熟知しています。辛い状況下において一人で悩まれないで、ご相談いただければと思います。
自賠責への請求が高額になることもある
慰謝料は、精神的な損害に対する賠償ですが、心の傷は他人には判断できませんし、また、同様の事故で慰謝料額が大きく違うということは不公平となります。そこで、慰謝料の額には一定の基準が設けられています。
この基準については、自賠責の基準、任意保険会社が独自に作成した基準、いわゆる弁護士基準と呼ばれるものがあります。金額について、一般的には、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準という順になっていますが、場合によっては、自賠責の基準の方が高くなることがあります。
過失割合により高額な慰謝料になる場合
被害者にも落ち度がある場合、過失相殺によって、賠償額が減少します。
しかし、自賠責の場合、被害者保護のために、この過失相殺に一定の制限が付されています。具体的には、被害者の過失が7割未満の場合には減額がなく、7割以上8割未満の場合には2割の減額、8割以上9割未満の場合には3割減額、9割以上10割未満の場合には5割減額となっています。
そのため、被害者に大きな過失が認められる場合、かえって自賠責の方が高額な慰謝料が認められることがあるのです。
自賠責保険に慰謝料請求したいなら
自賠責に支払いを求める方法としては、加害者から請求する加害者請求と被害者が自身で請求する被害者請求との2つの方法があります。以下では、それぞれについてご説明いたします。
加害者請求の流れとメリット・デメリット
加害者請求の流れについては、加害者が被害者に対して賠償金を支払った場合に、その支払いをした金額を限度として自賠責に保険金の支払いを求めることができます。つまり、加害者請求をするためには、先行して被害者に賠償金の支払をする必要があります。
また、請求できる保険金は、被害者に支払った金額を限度としていますので、加害者自身が支払った金額以上の保険金の請求はできず、支払い見込みなどを理由としての保険金請求も認められていません。
以下では、加害者請求のメリットとデメリットについて説明していきます。
加害者請求のメリット
加害者請求のメリットとしては、被害者が自賠責に保険金を請求する手続きを行わなくてもよいという点が挙げられます。
後述するように、被害者自身が自賠責に保険金を請求するには必要書類をそろえ、申請をしなければなりません。しかし、事故後の状況で、この手続きを行うことは大変でしょう。この点、加害者が請求する場合、被害者が自身で手続きを行わなくてもよいため、この点はメリットといえます。
加害者請求のデメリット
一方で、加害者請求の場合、加害者が自賠責に請求するかどうか、いつ請求するかの判断を加害者に委ねることになります。
そのため、例えば、加害者が被害者に対して賠償金を支払わないままにした場合、被害者は賠償金を得られないままとなってしまいます。また、加害者が被害者に対して、治療費だけを支払うなどした場合、被害者は治療費以外の保険金を受けられないなどということも考えられます。
このように加害者請求のデメリットは、被害者側で自賠責への保険金請求がコントロールできない点にあるといえます。
被害者請求の流れとメリット・デメリット
被害者請求について、被害者は、保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書、交通事故証明書(人身)、医師の診断書、診療報酬明細報酬書等の必要書類をそろえて、加害者が契約している自賠責保険会社に対して必要書類を提出することで保険金の請求が可能です。
以下では、被害者請求のメリットとデメリットについて説明していきます。
被害者請求のメリット
被害者請求の場合、仮に加害者との示談が進まない、成立しない場合であっても、加害者が契約している自賠責保険会社に対して、保険金の請求が可能であるため、自分で請求のタイミング等をコントロールできるところがメリットといえます。
被害者としては、加害者の対応によって、いつ保険金が得られるか分からないという状況では安心して治療を受けることもできません。被害者請求であれば、自賠責保険会社の調査がありますが、いつまでも請求がなされないなどはないため、この点がメリットとなります。
被害者請求のデメリット
一方で、上記のとおり、交通事故証明書や診断書、診療報酬明細書が必要など、被害者請求をするには、必要書類の取り付けが必要となります。
この必要書類について、交通事故証明書であれば警察署で取得し、診断書及び診療明細報酬書であれば担当の医師から取り付けるなど各所で必要書類の取り付けを行わなければなりません。
このように、被害者請求の場合、被害者が煩雑な手続きを行わなければならない点がデメリットといえます。
自賠責への請求を弁護士に依頼するメリットとは?
上記のとおり、加害者請求の場合、被害者は自賠責への請求がコントロールできない結果、いつ保険金を受け取れるのかが分からないなどのデメリットがあります。そこで、被害者自身で自賠責に請求するということも考えなければなりませんが、煩雑な手続きを行うのは非常に手間でしょう。
弁護士に自賠責への請求を依頼した場合、弁護士が被害者に代わって被害者請求の手続きを行うことができます。そのため、被害者は煩わしい手続きから解放されます。
自賠責への請求についても、お困りのことがありましたら、弁護士にご相談いただければと思います。
慰謝料の請求をお考えなら、すぐ弁護士にご相談ください!
繰り返しになりますが、被害者請求をする場合、自賠責への請求手続きを必要としますが、自己で身体に痛み等がある状態で手続きを行うことは大変でしょう。また、多くの場合、自賠責保険からの保険金は最低限の補償であって、十分な賠償を受けているとはいえません。そのため、自賠責への請求後は、加害者(又は、加害者が契約している任意保険会社)に対して、請求をする必要がありますが、どれだけの賠償金を請求してよいのかを判断することは困難であると思います。
弁護士は、専門家として、交通事故事件を扱っています。自賠責への請求や、加害者への請求、それ以外であっても、お困りのことがあれば、すぐに弁護士にご相談いただければと思います。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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