監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
自分が同乗している車が交通事故に遭い、怪我を負ってしまった場合、そもそも損害賠償請求をすることができるのか、誰に対して賠償請求をすることができるのか、通常の場合に比べて慰謝料の額に違いはあるのか、どのような点に注意しながら賠償交渉をすべきであるのかなど、様々な疑問点や問題が思い浮かびます。ここでは、同乗者の慰謝料の賠償請求の内容や、その際の注意点などについて、詳しく解説します。
目次
同乗者が怪我を負ったら
ご家族の方や友人が運転している車に乗っていたところ、交通事故に遭ってしまった場合、当然ながら、運転者だけでなく同乗者が怪我を負ってしまうこともよくあります。この場合、たとえば、事故を起こしてしまったドライバーに気を遣い、自分が怪我をしたことを言い出しにくいという状況もあるでしょう。また、自分は車に乗っていただけで、運転していたわけではないことから、交通事故の当事者ではないため保険が適用されないのではないかと心配されることもあるかもしれません。
しかし、このような場合であっても、同乗者もなるべくお早めに病院を受診した方がよいと考えられます。お身体のためにも早期治療開始が望ましいことは当然ですが、それだけでなく、事故当日から数日間や数週間が経ってから通院すると、そもそも交通事故が原因の怪我なのかどうかが争われてしまうこともあります。怪我をした同乗者も、基本的にはその交通事故における「被害者」であると考えられますので、加害者やその保険会社に対して賠償を求めていくべきです。
同乗者の慰謝料について
誰に慰謝料請求すればいいの?
同乗者としては、まず、「相手方車両のドライバー」に過失があれば、基本的にそのドライバーに対して慰謝料を請求していくことができるでしょう。
また、その交通事故において「同乗していた車のドライバー」にも一定の過失がある場合には、そのドライバーに対しても慰謝料を請求することができると考えられます。
同乗者の慰謝料相場はどれくらい?
慰謝料とは、交通事故により怪我を負い、通院を余儀なくされてしまったことによる精神的苦痛に対する賠償金です。そのため、同乗者の慰謝料の相場も、通常の慰謝料の基準と特に変わることはないと考えられます。
慰謝料の相場を解説同乗者が慰謝料請求したい場合は弁護士へお任せ下さい
同乗者が事故に遭った場合、誰に対して請求するべきか、同乗者の過失の有無など、通常の賠償交渉とは別のポイントがいろいろと出てきます。
そのため、そもそもどのように交渉を進めていけばいいのか、難しい局面も少なくないと思われます。弊所の弁護士は、交通事故に遭われた同乗者の方が慰謝料請求する案件の経験も豊富ですので、ぜひ一度、弊所の弁護士へご相談ください。
過失責任と慰謝料請求の関係
同乗者は実際に運転していたわけではありませんので、その交通事故が起きたことについて責任を問われることは少ないといえます。そのため、同乗者に過失があるとされることは、原則として「ない」と考えられます。
もっとも、たとえば同乗者が運転者の運転行為を妨害していたり、運転者による危険な運転を煽ったりしていた場合には、同乗者にも過失があるとされる場合があります。その場合には、同乗者の過失に応じて一定程度、慰謝料が減額されることになるでしょう。
同乗した車のドライバーに過失が無い場合
同乗していた車のドライバーに過失がない場合、基本的に、相手方車両のドライバーに100%の過失があると考えられます。そのため、この場合には、相手方車両のドライバー(が加入している保険会社)に対して損害賠償請求をしていくことになります。
なお、当該車両に関する自動車保険において、いわゆる「搭乗者傷害保険」を利用することができる場合には、保険会社から一定の保険金を受け取ることができることがあります。
双方に過失がある場合の慰謝料請求と注意点
たとえば、同乗していた車のドライバーと相手方車両のドライバーの双方に、いずれも5割ずつの過失がある場合、同乗者は、基本的には、双方のドライバー(が加入している保険会社)に対して損害賠償請求をすることができます。もっとも、任意保険における対人賠償保険には、加害者と被害者とが一定の親族関係である場合(たとえば、同乗していた車のドライバーが同乗者の配偶者である場合など)には対人賠償保険を使用できないという条件が付けられていることがあります。
この場合、同乗者は、同乗していた車のドライバーが加入している任意保険会社に対して賠償請求することができなくなります。同乗者としては、相手方車両のドライバー(が加入している保険会社)のほか、同乗していた車のドライバー自身や、同人が加入している自賠責保険会社に対して賠償請求していくことになるでしょう。
単独事故・相手のドライバーに過失が無い場合
たとえば、同乗している車のドライバーが自ら電柱や壁にぶつかる等、そもそも相手方がいない事故の場合や、相手方車両のドライバーには一切過失がない(同乗している車のドライバーに100%の過失がある)場合には、同乗者としては、基本的に、同乗している車のドライバーに対してしか賠償請求することができません。
また、この場合において、同乗者が運転者の運転行為を妨害していたり、運転者による危険な運転を煽ったりしていた場合には、同乗者にも過失があるとされ、同乗者の過失に応じて一定程度、賠償額が減額されることもあるでしょう。
同乗者の過失責任と賠償額減額の可能性について
たとえば、同乗者が運転者の飲酒運転や無免許運転の事実を知っていたり、運転者による危険な運転を煽ったりしていた場合には、同乗者にも過失があるとされる場合があります。具体的には次のとおりです。
飲酒運転だと知っていた
同乗している車のドライバーが飲酒運転をしていることを知りつつ、その車に同乗していた場合、同乗者にも当該事故について一定の責任があるとされ、同乗者にも過失があるとされることがあります。このような場合の同乗者の過失の割合について、1割~4割程度と判断した裁判例があります(飲酒以外の事情(スピード超過等)によっては過失割合も変動します)。
無免許運転だと知っていた
同乗している車のドライバーが無免許運転であることを知りつつ、その車に同乗していた場合、同乗者にも当該事故について一定の責任があるとされ、同乗者にも過失があるとされることがあります。
このような場合の同乗者の過失の割合について、2割~4割程度と判断した裁判例があります(無免許以外の事情(スピード超過等)によっては過失割合も変動します)。
危険な運転を止めなかった・煽った
同乗している車のドライバーが危険な運転をしており、そのような危険運転を止めようとしなかったり、煽ったりしていた場合、同乗者にも当該事故について一定の責任があるとされ、同乗者にも過失があるとされることがあります。
このような場合の同乗者の過失の割合について、1割~4割程度と判断した裁判例があります(その他の事情(スピード超過等)によっては過失割合も変動します)。
好意同乗・無償同乗の場合
たとえば、特にドライバーに運賃を支払うこともなく、家族や友人などの運転する車に同乗していたような場合、「好意で(無償で)同乗することにより、同乗者はドライバーから一定の恩恵を受けていた」のであるから、同乗者がドライバーに対して賠償請求をする局面では、ドライバーの賠償額を一定程度、減額すべきではないかという問題意識が以前はありました。
しかし、最近の裁判例では、「好意で(無償で)同乗していたこと」のみを理由としては、減額しない傾向にあります。
「対人賠償責任保険」とは
車を運転していて、事故により他人に怪我を負わせてしまった場合、運転者(加害者)は被害者に対して損害賠償責任を負うことになります。
本来であれば、運転者(加害者)が自ら被害者に対して賠償金を支払うところですが、対人賠償責任保険とは、運転者(加害者)の代わりに任意保険会社が被害者に対して賠償金を支払うという保険になります。
同乗者も弁護士費用特約を利用できる?
弁護士費用特約とは、弁護士に依頼する際にかかる弁護士費用を、保険会社が代わりに負担するという特約のことをいいます。弁護士費用特約の契約者自身ではなく、同乗者であっても、弁護士費用特約を利用できることがあります。
弁護士費用特約とは同乗者の方も、まずは弁護士へご相談ください。
同乗者が事故に遭った場合、誰に対して請求するべきか、同乗者の過失の有無など、通常の賠償交渉とは別のポイントがいろいろと出てきます。
また、同乗者であっても弁護士費用特約が利用できる場合には、弁護士費用を負担せずに弁護士に賠償交渉を依頼することができます。弊所の弁護士は、交通事故に遭われた同乗者の案件の経験も豊富ですので、ぜひ一度、弊所の弁護士へご相談ください。
同乗者が死亡してしまった場合の慰謝料請求について
同乗者が死亡してしまった場合、同乗者の加害者に対する損害賠償請求権を、同乗者の相続人が相続します(相続人が複数人いる場合には、相続分に応じて相続することになります)。死亡案件の場合は特に慰謝料や逸失利益などの損害額が大きくなることが多いので、亡くなってしまった同乗者の方のためにも、適正な賠償を得るべく、弁護士へのご相談をおすすめします。
同乗者の損害賠償請求に関する裁判例
同乗者の損害賠償金額が減額された裁判例
同乗者は、ドライバーと飲酒した上で、飲酒をしたドライバーが飲酒運転をすることを容認しながら、その車に同乗し、走行していたところ、対向車線を走行する普通貨物車に衝突し、同乗者が受傷した事例において、裁判所は、同乗者は車に乗車するに際して、事故発生の危険性が極めて高いような客観的事情が存在していることを十分認識していたといえるため、同乗者の損害賠償金額を25%減額するとの判断を示しました(大阪地判平21.3.24)。
なお、この事案では、同乗していた車のドライバーは無免許であったという事実関係もあったが、同乗者はその事実を知らなかったとされています。
同乗者の損害賠償金額が減額されずに済んだ裁判例
同乗者が、深夜に友人から誘われ、その友人の友人(同乗者にとっては初対面の人物)が運転する車に乗車し、初対面の人物(運転者)が「第二突堤でも行こうか」「ドリフトでもやろうか」等と言い始めたが、他の同乗者が誰も特に反応していなかったところ、運転者が車ごと突堤の岸壁から海中に転落して、同乗者を含む3名が死亡したという事例において、裁判所は、同乗者において、運転者が本当に危険運転をすると想定することは期待できず、事故発生の危険が増大する状況を承知していたとはいえず、積極的に作出・助長した事情もないとして、減額しないと判断しました(神戸地判平27.11.11)。
同乗者が交通事故に遭って揉めそうなら、弁護士にご相談ください
交通事故に遭遇してしまった同乗者は、自らは運転していないこともあり、同乗者には全く落ち度がないケースがほとんどだと考えられます。そうであるにもかかわらず、保険会社との賠償交渉の中で、ただ「同乗者であること」を理由に賠償額が減額されてしまうのは、納得しがたいところだと思います。
同乗者であるからといって、賠償請求を控えたり、一定の減額をそのまま受け入れてしまうのではなく、適正な賠償を受けるべく、しっかりと交渉していくべきです。弊所の弁護士は、交通事故に遭われた同乗者の案件の経験も豊富ですので、ぜひ一度、弊所の弁護士へご相談ください。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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