交通事故
交通事故に遭って通院することに…。
通院に掛かった費用や慰謝料はどうやって決める?
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
交通事故で怪我をして通院を余儀なくされた場合、加害者に治療費を請求できるのはもちろんですが、怪我を負わされ通院を続けなければならなくなった精神的苦痛に対する通院慰謝料、実際に通院する際にかかった交通費、一人では通院が困難であった場合の通院付添費なども請求することができます。
では、これらはどのようなときに請求でき、どのように金額が決められるのかを以下で解説していきましょう。
目次
通院した際の慰謝料【通院慰謝料】についてみてみましょう
交通事故で通院した際の慰謝料には3つの基準があります
慰謝料算定にあたっては、①自賠責保険から支払われる最低限の賠償額である自賠責基準、②任意加入の自動車保険会社がそれぞれの社内で独自に設定した任意保険会社基準、③裁判例を元にして弁護士が介入した場合に獲得しうる弁護士基準の3つがあると言われています。
交通事故に遭った際に、加害者加入の任意保険会社から提示される任意保険会社基準に基づく賠償額は自賠責基準を少しだけ上回る程度のものがほとんどです。
通院慰謝料はどのように決められるの?入院もしている場合は?
弁護士基準によっても自賠責基準によっても、通院慰謝料は通院期間、実通院日数に応じて算定されることになります。また、入院を伴う場合には入院期間も通院慰謝料を算定するのに考慮され、通院のみの場合と比べて高額になります。
通院期間や治療期間ってなに?どう違うの?
治療期間とは交通事故によって負った怪我を治癒するために行った治療の総期間のことで、入院期間と通院期間の合計が治療期間にあたります。
入院期間は入院していた期間を指し、通院期間は治療のために通院した期間を指します。
そして、通院期間中で実際に通院した日数のことを実通院日数と言います。
ですので、通院を4月1日に開始し、4月30日で治療終了となったが、そのうち実際に通院した日数が12日であった場合には、通院期間は30日間で、実通院日数は12日間ということになります。
通院慰謝料の相場
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
通院期間1ヶ月(30日) 実通院日数12日 |
10万3200円 | 28万円 |
入院期間1ヶ月(30日) 通院期間1ヶ月(30日) 実通院日数12日 |
25万8000円 | 77万円 |
それでは、あなたの通院慰謝料は、自賠責基準と弁護士基準とではどのくらいの差が出るのでしょうか。そして、加害者加入の任意保険会社からの通院慰謝料の提示はどちらの基準に近いでしょうか。
ぜひ実際に以下の計算ツールを利用して確認してみてください。
賠償額計算ツールへ通院日数が少ないと慰謝料の計算に不利になる?
弁護士基準の通院慰謝料は、基本的には治療期間(入院期間+通院期間)をもとに算定されます。しかし、実通院日数が少ない場合には、実通院日数をもとに算定され、治療期間をもとに算定した通院慰謝料と比較すると低額の慰謝料しか獲得できない可能性が高まります。
通院日数による通院慰謝料相場の比較自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
通院期間1ヶ月(30日) 実通院日数4日 |
3万4400円 | 13万円 |
通院期間1ヶ月(30日) 実通院日数12日 |
10万3200円 | 28万円 |
通院慰謝料は交通事故の怪我によって通院を続けなければならなくなった精神的苦痛を慰謝するためのものですので、実通院日数が少ない場合にはその精神的苦痛はたいしたことがなかったのだろうという加害者加入の任意保険会社の言い分が通りやすくなり、低額しか認められない可能性があります。場合によっては、同じ治療期間であっても通院慰謝料の額が2倍以上も変わることもあり得ます。
通院慰謝料を増やすためには通院頻度を多くすればいい?
通院慰謝料は治療期間や実通院日数をもとに算定されるため、基本的にはしっかり通院を続けることによって通院慰謝料も充実することになります。
しかし、通院慰謝料はあくまで必要な治療を行うための通院に対して認められるものですので、ただ闇雲に通院頻度を増やしたり、通院期間を延ばしたりしても、通院として認められず、通院慰謝料が増額されない場合もあります。この場合、通院慰謝料が増額しないばかりか、通院として認められなければ治療費自体も支払われない危険もあります。
リハビリは通院回数に含まれる?
リハビリも基本的には通院として通院慰謝料の算定に加味されますが、リハビリについてもただ闇雲に通い、通院回数を増やせばいいというわけではありません。詳しくは、以下の「リハビリ費用を慰謝料請求する際の注意点とは」のページをご参照ください。
リハビリ費用を慰謝料請求する際の注意点とは仕事を休んで通院すると業務に支障が出る場合
また、交通事故の怪我によって休業せざるを得なくなった場合には、通院慰謝料とは別に、休業することによって得ることができなくなった収入を補てんしてもらうために、休業損害を請求することもできます。詳しくは、以下のページをご参照ください。
休業損害はどのように計算するか弁護士なら通院頻度のアドバイスもできます
通院慰謝料は治療期間や実通院日数から算定されるため、完治を目指すためにもしっかりと通院することで通院慰謝料もしっかりと獲得することができます。
しかし、ただ闇雲に通院頻度を増やし、通院期間を延ばせば通院慰謝料も増え続けるというわけではなく、反対に治療費の一部が認められなかったり、通院のために生活リズムが大きく変わってしまったりといった不利益を被る可能性もあります。
そこで、弁護士にご相談いただければ、適正な通院慰謝料を獲得するという観点から、理想的な通院頻度をアドバイスすることもできますので、将来適正な損害賠償を獲得するためにも交通事故直後や治療中の段階であっても是非一度お気軽にご相談ください。
通院慰謝料以外にも受けられる賠償はあるの?
交通費
通院にかかった交通費も交通事故の損害ですので、加害者に請求することができます。ただ、交通費についても、請求できるのは必要かつ相当な範囲です。交通手段としては、徒歩、自家用車、公共交通機関、タクシーなどいろいろなものが考えられると思います。また、通院にかかる費用として、駐車場代、高速代なども考えられます。これらの費用について、どのような場合にどのような費用が認められるかは、以下のページをご参照ください。
通院付添費
通院付添費とは、通院するにあたって他の者の介助を必要とする場合に、そのような付添介助者を確保するための費用です。怪我の状態や被害者の年齢など(例えば①90歳のおじいさんが足を怪我して歩行が困難な場合、②幼稚園児でそもそも一人での外出ができない場合など)から被害者一人で通院することが困難であると認められる場合には、原則として1日あたり3300円を基準に請求していくことが可能です。
プロに付添を任せた場合付添いが必要と認められる場合に、ヘルパーさんなどを雇って通院に付き添ってもらったときには、請求することができます。このとき、付添いのための費用が3300円を超える場合には、不当に高額でない限り、実費全額を請求できるでしょう。
家族等に付添を任せた場合たとえ近しい家族に付き添ってもらう場合でも、その付き添ってくれる家族の時間を犠牲にするわけですので、必要に応じて通院付添費を請求することができます。この場合にも、例えば付添いのために家族が仕事を休んだなどの事情があるとき、1日あたり3300円を超えて、休んだ日の給料相当額について通院付添費が認められることもあるでしょう。
通院慰謝料がもらえるタイミング
通院慰謝料額は治療期間や実通院日数から算出されますから、通院慰謝料を請求することができるのは基本的には治療がすべて終了してからになります。治療期間や実通院日数は、通院していた病院が発行する交通事故用の診断書、診療報酬明細書の記載で確認することになり、これらの書類は治療を終了した翌月中には発行されます。治療によって完治した場合には、この段階ですべての損害額について確定することができるようになりますので、通院慰謝料額を確定させて、交通事故による全損害についての示談交渉を開始することになります。
一方、治療終了時点で痛み、しびれが残っているなどの場合には、後遺障害が認定されれば、通院慰謝料のほかに、後遺障害による慰謝料や逸失利益も請求することができますので、治療終了後、後遺障害の認定を経てから示談を行いましょう。
示談交渉は自分でもできる?
交通事故の示談交渉はもちろん被害者ご自身でも行うことはできます。しかし、加害者加入の任意保険会社の担当者は仕事として交通事故被害者ばかりを相手としており、交通事故における示談交渉の経験や知識は、被害者と比べて大きく上回っています。
それらしい理由を並べてくるので、提示額が適正なのかどうか不安を持たれる方も非常に多いです。このような状況で示談交渉を進めるには新たな精神的ストレスを伴うことになります。
示談交渉を弁護士へ依頼するメリットは?
保険会社の担当者が言っている内容が正しいのか不安を感じるなど、加害者側との情報の格差をできる限りなくすためには、弁護士に依頼するのがベストです。交通事故の処理に精通した弁護士であれば、保険会社の担当者の言い分のうち、もっともらしく見える方便に適切に反論することもでき、請求できるとは思っていなかったり、回収を諦めていたりした費用について、回収することができるかもしれません。そして、最終的な損害賠償額について、ご自身で交渉された場合と比べて、大幅に増額できる可能性が高いです。
また、弁護士が介入した場合、保険会社の担当者との窓口は基本的には弁護士が担当することになりますので、保険会社の担当者とのやりとりで感じるストレスからも解放されることになります。
でも費用が心配…
もしあなたが加入している自動車保険などに弁護士費用特約を付加している場合には、それを利用して弁護士に依頼することができます。弁護士費用特約が利用できる場合、法律相談料、着手金、成功報酬など弁護士を依頼するのに発生する費用は基本的にすべて保険会社が支払ってくれ、ご自身の金銭的負担なく弁護士を介入させることができます。
まずはご相談ください
また、弁護士費用特約がなく弁護士に依頼したら費用倒れになるのではないだろうかと心配の方もいらっしゃるかと思います。
加害者加入の任意保険会社が提示してくる損害賠償額は弁護士基準をはるかに下回り、弁護士介入により増額できるケースが数多くありますが、弁護士が介入することによりどのくらい増額でき、費用倒れにならないかということをお調べすることもできますので、ご自身の損害賠償額に疑問、不安をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。あなたの状況に合わせた最適な方法が見つかるはずです。
-
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)