監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
交通事故で負傷した場合、その治療を行うために有給休暇を使用して通院をすることはよくあります。また、交通事故の法律相談において、有給休暇を使用した場合でも休業損害が支払われるのかというのはよく聞かれる質問です。 そこで、有給休暇を使用した場合でも休業損害として支払われるのか、以下で説明していきたいと思います。
目次
治療のために有給休暇を取得しても休業損害として支払われる!
結論から言えば、治療のために有給休暇を使用した場合でも休業損害は支払われます。そもそも、この疑問が生じる理由は休業損害が支払われる条件にあります。まずは、どのような場合に休業損害が支払われるのか、説明していきたいと思います。
休業損害が支払われる条件
休業損害は、交通事故に遭ったことにより、入院や通院等で休業せざるを得なかった場合に休業していなければ取得できた収入分が支払われます。そうであれば、有休休暇を使用した場合、仕事を休んでもその間の収入分は減らないことから、有給休暇分の休業損害は支払われないのではないかという疑問が生じるのです。
有給休暇の使用で休業損害が支払われる理由
有給休暇とは労働基準法上「年次有給休暇」と言い(労働基準法39条)、使用者との契約内容にかかわらず法律上の要件を満たせば、当然に発生する労働者の権利であって、仕事を休んでも給料が支払われるという点で財産的価値が認められるものです。そのため、交通事故による負傷の治療を行う目的で入通院をするために有給休暇を使用した場合は、その分の財産的価値が失われたといえるので休業損害が支払われるのです。
有給休暇を使った場合に支払われる休業損害はいくら?
自賠責保険に対して、休業損害を請求する場合、支払われる額は(6,100円~1万9,000円)×休業日数となります。任意保険基準や弁護士基準では、会社員(給与所得者)の場合、休業損害証明書に記載された事故前3か月分の給与を90日で割り、1日あたりの基礎収入を算出することが多いです。もっとも、任意保険基準は任意保険会社の独自の基準なので、休業損害証明書に記載された給与から1日あたりの基礎収入を算出しないこともあり、弁護士基準よりも低額で算出されることがあります。
有給休暇の取得と欠勤どちらが得か
有給休暇を取得した場合、会社からは有給休暇分の給料が支払われ、保険会社からは休業損害分の金銭が支払われますが、有給休暇は減ることになります。欠勤の場合は保険会社から休業損害分の金銭が支払われるのみですが、有給休暇は減ることはありません。どちらが得かは一概には言えませんが、旅行などで有給休暇を使いたい人にとっては欠勤の方が得であることもあれば、ちょっとでもお金を多く取りたいという方は有給休暇を取得した方が得といえます。
有給休暇を取得した方がいいか迷ったら、一度弁護士へご相談をしてみる
弁護士は、適切な賠償額を請求するために通院の頻度やどのような治療を受けたらよいか等的確なアドバイスをすることができます。有給休暇を取得した方がよいか等疑問に思うことありましたら弁護士へ一度ご相談ください。
有給休暇取得による休業損害の請求方法
有給休暇を使って休業した場合でも、休業損害の請求方法は変わりません。休業損害証明書に有給休暇についての記載欄があるので、そこに会社が記入したうえで保険会社に提出することになります。しかし、休業損害証明書の記載方法について保険会社によって異なる場合があります。記載方法については保険会社等に問い合わせて正確に記載してもらう必要があります。
詳しくは交通事故慰謝料休業損害の記事をご覧ください。
治療のために取得した有給休暇は復活できる?
有休を復活させられるかどうかは勤務先の会社との契約内容によることになります。交通事故の治療のために有休を使った場合、有休を復活させられるかについては会社との契約内容を確認したり、勤務先の会社に問い合わせる必要があります。
有給休暇の取得タイミングに注意
損害として認められるものは交通事故と相当因果関係にある範囲のものに限られます。したがって、交通事故からかなり時間が経った後に有給休暇を取得した場合、交通事故との有給休暇取得との因果関係を疑われ、有給休暇分が損害として認められない可能性があります。
有給休暇分の休業損害も請求するなら、弁護士へご相談ください
事案によっては有給休暇分の休業損害を請求できる日数や金額などの範囲が異なる場合があります。また、弁護士を通さずに保険会社へ請求した場合など、休業損害の額が弁護士基準と比べてかなり低く算定されることもあります。適切な有給休暇分の休業損害を請求するためにも弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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