監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
交通事故によりけがを負ったり、後遺障害が残ったりした場合、被害者には精神的損害が生じると考えられています。つまり、「身体」が傷ついた結果、通院を余儀なくされたり、一生、後遺障害と付き合っていかなくなったりすることで、「心」まで傷つくと考えられます。そこで、その精神的損害についても賠償の対象となっているのです。
このページでは、主に交通事故の慰謝料や弁護士に依頼するメリット等について説明していきます。
目次
弁護士に依頼するとどんなメリットがあるの?
弁護士に依頼すると、示談金額が適切な金額となる、交渉に慣れているため保険会社との交渉もスムーズに行える、被害者が保険会社の担当者と話をしなければならないという苦痛が無くなるなどの多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるか具体的にお話しします。
示談金の大きな違い
弁護士に依頼すると、適切な金額で示談することができます。言い換えれば、不当に低い金額で示談するということを防ぐことができます。誰が交渉するかで金額が変わるの?という疑問を持たれる方もいるかもしれません。しかし、誰が交渉するかで金額が変わることがあります。
交通事故により頚椎捻挫というけがをして、通院期間が3ヶ月(90日)、実際に病院で治療を受けたのが、40日の場合を例として説明していきます。この場合、通院の慰謝料は、自賠責の基準では、34万4000円となります。この金額は保険会社がよく提示してくる金額です。しかし、いわゆる弁護士基準と言われる基準では、53万円となり、20万円近く差が出ます。
このように慰謝料について十分な知識がなければ、提示額が適切かどうか判断できず、結果として、低い金額で示談してしまうこともあるのです。
慰謝料の比較についてはこちら 示談金に違いが出るのはなぜ?上記の例では、なぜ20万円もの差が出たのでしょうか。これは、慰謝料にはいくつかの基準があるからです。
慰謝料は、精神的な損害に対する賠償です。しかし、事故の被害者がどれだけの精神的に傷ついたのか、他人が判断することはできません。また、同様の事故で慰謝料の金額が全く違うというのも不平等です。そこで、慰謝料額には一定の基準が作られています。
この基準は、自賠責基準や保険会社基準、弁護士基準といったものがあります。一般的には、自賠性基準が最も低く、弁護士基準が最も高くなりますが、弁護士が交渉を行う場合、弁護士基準で交渉を行います。そのため、弁護士基準での慰謝料獲得が期待できます。
慰謝料の算定基準についてはこちらスムーズな示談交渉
多くの交通事故の被害者は、初めての経験であり、提示される金額が妥当なのかどうかも判断できません。また、日常的に交渉を行っているわけではないため、何を話せばよいのか、どのように話せばよいのか分からないまま交渉を行うほかありません。その結果、交渉が滞ってしまうということも少なくありません。
弁護士は、日常的に交渉を行い、また、十分な法的知識も有しています。そのため、スムーズな交渉を行うことができ、この点も、弁護士に依頼するメリットと言えます。
精神的な負担も軽減
被害者は、交通事故によりけがを負っている状況であり、けがの痛みなどから精神的にも辛い状況です。被害者は、このような状況で、保険会社と交渉を行う必要があります。特に、治療費の打ち切りの話など、どれだけ治療が受けられるのかといった切実な問題も交渉しなければなりません。 しかし、身体に痛みがある中でこのような交渉を行うことは大変であり、保険会社とのやり取りによっても、精神的に苦しくなってしまうことがあります。
弁護士に依頼した場合、交渉の窓口は弁護士になります。そのため、身体がつらい中で、保険会社とやり取りをするという精神的な苦痛もなくなります。また、休業損害や治療費の打ち切りの点は、法的な問題も含まれており、法律知識も重要となります。このように弁護士への依頼は精神的負担の軽減にもつながります。
自身で保険会社との交渉するのは大変です。お困りなら弁護士へ
交通事故の被害者は、けがを負ったりして身体的に大変な状況であることが大半です。骨折とかのひどいけがではなくても、痛みが続くとか、身体が重いとか、しびれがあるなどの症状が続くこともあります。ご自身で保険会社と交渉をする場合、このように身体も心も辛い中で交渉をしなければなりません。 交渉相手としては、多くの場合、加害者側の保険会社です。そのためか、被害者に寄り添った話をしないこともあり、保険会社とのやり取りに苦痛を伴うことも珍しくありません。
実際、保険会社と話をするのがもう嫌なので、弁護士に依頼したいという方は珍しくありません。人によっては、保険会社とのやり取りで二次被害を受けているようだとおっしゃる方もいます。
また、保険会社は日常的に交通事故の対応しているため、圧倒的に多くの知識を有しています。そのため、保険会社から「これくらいが妥当ですよ」と説明されると、たとえその金額が低くても状況が分からないまま合意してしまう方もいます。
弁護士に依頼した場合、交渉の窓口が弁護士になるため、保険会社と話をする苦痛から解放されます。また、弁護士は法律のプロとして豊富な知識を有していますから、知識の面で負けることもありません。保険会社と話をするのが大変と感じられているようでしたら、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士への依頼にデメリットは無いの?
上記では、弁護士に依頼するメリットについて述べて来ました。では、弁護士に依頼することにデメリットはないのでしょうか?これについては、一定の場合、デメリットも存在します。
どういった場合に依頼すべきなのか判断ができるように、以下では、弁護士に依頼した場合のデメリットについて記載していきます。
費用倒れの懸念
弁護士は、仕事として依頼を受けますから、当然、弁護士への費用が発生してしまいます。そのため、費用倒れが起きてしまうことがあります。
では、どういった場合に費用倒れが起きるのでしょうか。いくつか考えられますが、例えば、軽微な事故であり数日でけがが治る場合が考えられます。これは、賠償額も低く、その結果、費用倒れになるということです。
また、既に保険会社から賠償金額が提示されており、その金額がある程度妥当な金額である場合が考えられます。保険会社の提示額が90万円で、法律上、取得できる金額が100万円としましょう。弁護士が介入した場合、最大で10万円増額できますが、弁護士の費用が10万円以上かかる可能性が高いと思います。このように保険会社がある程度妥当な金額を示した場合も費用倒れになる可能性があります。
事前に費用倒れの可能性がある場合お伝えします弁護士法人ALG&Associatesでは、相談の前にどのような事故なのか、どれくらいの金額が提示されているのかなどをお聞きしています。それにより、弁護士に依頼すると費用倒れになってしまうなど、弁護士に依頼することがかえってデメリットになってしまう場合には、事前にその旨をお伝えしています。
弁護士に依頼するメリットがない場合は、事前にご説明していますので、安心してご連絡いただければと思います。
弁護士費用特約に加入していれば利用しよう
自動車を持っている多くの方は、最低限加入が義務付けられている自賠責保険だけでなく、もしもに備えて任意保険にも入っていると思います。この任意保険には弁護士費用特約という特約がある場合があります。
弁護士費用特約とは、交通事故に遭った際、弁護士への法律相談料や弁護士費用を保険会社が支払うという特約です。このような特約がある場合、基本的に、弁護士への費用は保険金によって賄われますので費用倒れの心配がありません。事故の際には、弁護士費用特約を活用することをお勧めします。
弁護士への依頼はいつすべき?
弁護士には、いつ相談するのが良いのでしょうか。弁護士に依頼するのは交渉だけと考えている方も多いようですが、交通事故で弁護士が代理できるのは示談交渉だけではありません。以下では、弁護士がどのようにかかわっていくことができるのかお話ししていきたいと思います。
交通事故直後からご相談ください
実をいうと、交通事故の直後から弁護士が対応できることはあります。もちろん、弁護士が救急車を呼んだり、医師に代わって治療したりすることができるわけではありません。そのため、身体の状態がある程度落ち着いてからとなりますが、弁護士は、保険会社とのやり取りについて、被害者の代理人として活動することができます。例えば、転院の際のやり取りや、治療期間の交渉等、示談前でも保険会社と話をしなければならないことが多々あります。弁護士は、このようなやり取りについて、代理することができます。
保険会社とのやり取りを弁護士に任せることができる結果、被害者は、治療に専念することができます。このように交通事故の直後から弁護士に依頼するメリットはありますので、早めの相談が良いでしょう。
後遺症が残りそうな場合もお任せください
どうしても痛みや重だるさ、しびれが残るなど、治療しても症状が残ってしまうことがあります。このように残った症状については、後遺障害として認定されるかが重要となります。認定されるか否かによって大きく賠償金額が変わる可能性があるためです。
後遺障害の認定にあたっては、後遺障害診断書が重要な証拠となり、認定基準に沿った内容が書かれていることが重要となります。弁護士は、専門家として認定基準を知っていますので、身体の状態に即して重要な点の記載をお願いすることが可能となります。
また、後遺障害申請手続きを代理できますので、必要書類が何かを調べて手続きを行うなどという手間も省けます。
後遺障害が残りそうな場合は、弁護士に相談し、申請を任せてしまうのが良いでしょう。
後遺障害等級認定についてはこちら示談成立前にご依頼ください
上記では、事故直後や後遺障害申請前に弁護士への依頼のメリットを説明してきましたが、もちろん、示談交渉を弁護士に依頼することも可能です。
示談交渉においては、事故の状況、通院状況、仕事を休んだ日数、休んだ期間、後遺障害の認定の有無、認定の結果等を踏まえて、適切な金額を考える必要があります。このような金額を考えることなく、やみくもに示談を始めても目標がないため、無用に交渉を長引かせてしまったり、着地点が見いだせなくなってしまうなどの事態が生じてしまうためです。
弁護士法人ALG&Associatesでは、ご依頼者様の最大限の利益を目指しながら、適切な金額を判断し、交渉を行っています。示談をする前に、一度、ご相談いただければと思います。
交通事故の示談についてはこちら弁護士を選ぶポイントとは?
どんな弁護士に依頼するのが良いのでしょうか。普段、弁護士と話もしたことがない人がほとんどだと思いますので、迷われるのは当然だと思います。そこで、以下では弁護士選びにおけるいくつかのポイントを挙げていこうと思います。
交通事故事件をどれくらい扱っているか
弁護士選びの一つのポイントは、どれだけ交通事故事件を扱っているのかという点でしょう。つまり、交通事故事件の経験です。例えば、保険会社との交渉の流れや、後遺障害申請に必要な書類は何かということは、たとえ弁護士であっても経験してみないと分からないでしょう。
また、交通事故事件の経験数が多ければ、おのずと類似の状況を経験したことがあり、そのときの解決方法が別の事件でも役に立つことは少なくありません。
このようにどれだけ経験があるかは、弁護士選びの一つのポイントとなるでしょう。
分かりやすい説明や話しやすさ
れだけ経験があったとしても、その弁護士と話しにくいとか、言っている内容が分からないということであれば、弁護士と信頼関係を築くことは出来ません。そもそも、弁護士はあくまで代理人であるため、最終的にどのような判断をするかは、ご自身で行う必要があります。しかし、弁護士が言っていることが分からなかったり、何を言っているのか分からないけど、質問できない状況だったりでは、適切な判断をすることはできないでしょう。
そのため、説明の分かりやすさや、話しやすさも弁護士選びの重要なポイントとなります。
弁護士だからといって身構えず、お気軽にご相談ください。
上記の点(特に、話しやすさや内容の分かりやすさ)は、一度、弁護士と話をしてみないと分からないでしょう。弁護士に相談するなんて大げさと思われる方もいるかもしれませんが、例えば、後遺障害が残ってしまうといった場合は、一生の問題になりかねません。後悔しないように相談に行かれるべきでしょう。
弁護士特約に入っていれば法律相談料も保険会社から支払われますし、また、無料相談を行っている場合もありますので、身構えずにお気軽にご相談いただければと思います。
交通事故に遭い慰謝料請求でお困りなら、すぐ弁護士へご相談ください
今までのまとめとなってしまいますが、弁護士へ依頼すると、①適切な金額で示談できる、②スムーズな交渉が可能となる、③保険会社とのやり取りを任せられるなどと言った多くのメリットがあります。
もちろん、場合によっては費用倒れしてしまうなどの場合もありますから、すべての場合において、弁護士に依頼すべきとは思いません。しかし、弁護士に依頼するべき状況か否かをご自身で判断することは極めて難しいでしょう。そのため、弁護士に依頼すべき事故なのかどうかを判断するためにも、一度、弁護士に相談するのが良いでしょう。
また、状況が良く分からないまま示談してしまうのは、後悔だけが残ってしまう可能性もあります。納得した上で、決断をするためにも、慰謝料請求等でお困りでしたら、すぐに弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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